①目的
シラカバは木一本まるごと利用できるとされ、シラカバ天然更新による森づくりの初期の段階で間引きによって林内に放置される幼木を有効活用できないか、可能性を探る
参加者に、シラカバの多用な用途やしらかばの可能性について知ってもらい、白樺プロジェクトについても理解を深めてもらう。
【背景】
北海道では植林と言えば針葉樹が主で、広葉樹を人工的に育てている事例は数少ない。その中でシラカバは、人の手で育てることができる数少ない広葉樹として、研究が進んでいる。白樺の人工的な天然更新の初期段階では、林業の施業の一つとして、密生したシラカバの幼木を間引きする作業がある。通常は間引きのために切り倒した幼木を林内に放置しているが、その幼木の活用方法の1つの可能性として、ハーブティ用の若葉採集ワークショップとして行えないか検討する。
②開催日程/日時:6月3日(土曜日)/曇りのち雨
※今回は、5月14日に発生した朱鞠内湖北岸のヒグマによる人身事故を受け、北海道大学雨龍研究林での作業はとりやめ、安全性確保の観点から、一般参加者による森林での若葉採集体験自体を中止としました。一般参加者は午後からのリアンファームでの若葉採集、蒸留水づくり、ハーブティづくりのコースのみとし、関係者のみで代替地である中川研究林で若葉を採集してリアンファームに持ち込みました。
6月3日(土曜日)
9:00 おといねっぷ道の駅集合、自己紹介。作業の目的、内容、注意事項の確認。採集地まで、5台の車に分乗して移動
9:15 採集地に到着。雨竜研究林の吉田教授と坂井より、シラカバ、ダケカンバ、ウダイカンバの見分け方レクチャー。坂井より、今回の採集地や天然更新についての説明、木の伐り方の実演。
9:40~ 吉田教授、坂井が、残すべきシラカバの木を選んで蛍光テープを取りつける
9:45~ 参加者全員で間引き作業開始。木の根元付近より伐採し、シラカバのみを選別。太い枝を取り除き、車内に積み込む。
11:00 ハイエース2台分の若葉を積み込み、作業終了。片付け、撤収。帰り際に有賀の沢の造林地に立ち寄り、吉田教授の説明を受けながら、100年生のタモの人工林を見学。
11:20 中川研究林出発
11:30 おといねっぷ道の駅集合。各車、Lienファームに向かう。
13:00 Lienファームでは一般参加者と共に、農園に生えているシラカバ若葉を採集。蒸留水づくりを始める。
14:00頃 採集した若葉を積載したハイエース2台が、Lienファームに到着。シラカバの枝を搬入。乾燥棚の前のスペースに、剪定作業場所のタープを設置。
14:30頃 各車、順次到着。太い枝を取り除き、枝葉を適切なサイズに切る作業を、既にLienファームで作業していた一般参加者と共に行う。
15:20頃 作業終了。鳥羽山から、白樺プロジェクトの説明。Lienファームの石田代表から、白樺蒸留水や白樺ハーブティの効能について説明。質疑応答。
15:50 解散
③シラカバ若葉の採集場所
北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション中川研究林内のアカエゾマツ造林地横のシラカバ天然更新林
④参加者・協力者(敬称略)
<協力者> Lienfarm(リアンファーム、オーガニックハーブティー・蒸留水・精油製造販売)代表 石田佳奈子
<北海道大学雨龍研究林> 吉田(北海道大学教授)、坂井(技術専門職員)他2名
<白樺プロジェクト> 秋津、田中、鳥羽山、、杉達、笠原
⑤服装、持ち物など
<個人> 森林での作業に適した服装、長靴、手袋、帽子、着替え
<共同> 剪定ばさみ、手鋸、ヘルメット(研究林、個人)
ブルーシート、救急箱(木と暮らしの工房)
手鋸は伐採に使用、剪定ばさみは車の積み込み時に根元を切るのと、ハーブ農家での作業時に使用。ブルーシートは作業や車の積み込み時に使うが、若葉をくるんで蒸れてしまう使い方をしてはいけない。
⑥採集地と、シラカバの天然更新について(坂井さんからの説明)
今回の若葉採集現場は、11年前に、造林計画に基づいて地ごしらえ(ササを刈り払って植林する針葉樹の苗木を植えつけやすい環境を整えること)が行われた土地。この地ごしらえというのが、シラカバの天然更新に調度よい環境を作り出すことになる。シラカバは、ササが多い場所では発芽できないが、ササが取り除かれただけで、密生した林になる。この場所も、造林地としてマツが植えられているエリアの外側に、シラカバが勝手に生えてきて、林になっている。11年生のシラカバ林ということになる。(※隣のエリアで生長している植林されたマツは、2~3mの高さだった)
今回は、この密生した細いシラカバ林の中から、立派な木に育ちそうなシラカバを選んでテープで印をつけ、それ以外のものはすべて手鋸で切っていく。間伐をするのとしないのとでは、木の生長具合が全く変わる。同じ30年でも、間引きすれば太くなるが、しなければ細いまま(直径10㎝と30㎝の幹の輪切りサンプルを見せながら違いを説明)。初期生長が終わったカンバの伐採率は90~95%と考えられている。初期生長が終わった時点で、木と木の間の空間をかなり広くとる必要がある。針葉樹とは全く違うということが分かる。今回、テープをつけて残した白樺は、今後、成長具合を見ていく。
⑦作業内容、注意事項
採集地のすぐ横までハイエースをつけ、ヒグマが出たら速やかに車に退避することを全員で確認。
作業前に、吉田先生と坂井さんから、この採集地には見た目が良く似ている「シラカバ」「ダケカンバ」「ウダイカンバ」の3種のカンバが生えており、見分け方る必要がある、との説明があり、葉の特徴による見分け方を教わる。シラカバは葉の表面がツルツルしていて、葉脈の数が少なめ。葉脈が浮き出ていないので、葉の表面が平ら。葉の形が三角形に近い。などの特徴を教えてもらう。また、坂井さんから、木の切り倒し方について、実演を交えての説明を受ける。
間引きを兼ねた伐採作業では、約4~5mに生長した白樺と約1mのササが密生している林に分け入り、テープで印をつけた白樺以外の木を端から伐っていった。
切り倒す人、集材して適度な長さに剪定していく人に別れて作業。伐り倒す人は、シラカバ、ダケカンバ、ウダイカンバを全て伐っていく。集材する人は、シラカバだけを選り分けて林から出し、車の前に広げたシートの上で適度な長さに伐りそろえる。伐りそろえたものから、シートを敷いたハイエースの荷台に積み込んでいく。約1時間の作業で、2台のハイエースの荷台がほぼ埋まる量になった。
作業前は木々が鬱蒼としている印象だった林も、作業後には明るく開けて見通しが良くなった。大きく育てるために残した白樺の木が所々にポツポツと生えている様子は、広々として気持ちの良い印象だった。約40平方メートルのシラカバ林の中に、約15本の木を残し、それ以外を全て伐採(間引き)した。
若葉を積載したハイエースは、葉の品質が落ちないよう、運転時は窓を明けて移動。2時間以上の移動だったが、天気が悪かったこともあるのか、Lienファームに運び込まれた若葉はあまりしおれてはいないようだった。雨だったため、Lienファームの乾燥小屋の前にタープを設置し、待機していた一般参加者と共に、若葉がついた枝を適切な大きさに切り直す作業。約1時間で、蒸留水に使う分と、乾燥小屋の棚を満たす量の若葉を切ることができた。
⑧ワークショップ最後のお話と、質疑応答
現在、家具などで利用できる優良な広葉樹が不足しているという現状がある。その中で、シラカバを人の手で育てようと試みていて、雨竜研究林ではシラカバを天然更新で育てている。間引きされる幼木を捨ててしまうのではなく、ハーブティーとして活用できれば、林業の手助けにもなるのではないかと考え、ワークショップを開催しました。白樺は木一本丸ごと使える木で、材を家具や建築に利用するだけでなく、樹皮でかごをつくったり、カヌーにしたりと、北方圏では様々な使い方がされてきた。北海道では身近な存在であるシラカバを上手に使って、豊かな暮らしをしていけたら、と考えています。
・Lien代表の石田さんからのお話
白樺のお茶や樹液は、人間の水分代謝を助けてくれる働きがある。ヨーロッパでは、膀胱炎やリウマチ、関節痛などの症状を和らげるために使われている。抗酸化作用があるので、美肌効果も期待できる。健康維持に、是非使ってみてほしい。
質疑応答(回答は全て石田さん)
Q 蒸留水の使い方は?
A 化粧水がほとんどだが、水やお湯に吹きかけて、ハーブティ代わりに飲んでも良い。そのまま飲むと濃すぎるので、コップ1杯に小さじ1杯程度が目安。
Q 生の若葉を煮だしたらハーブティになる?
A なる。むしろ、フレッシュハーブティというのはとても良い。普通のハーブティと同じように、ポットに葉を入れて沸騰したお湯を注ぎ、5分くらい蒸らせばOK。
Q ハーブティにするなら、できるだけ若い葉が良い?
A 5月までに採れるものが良い。それ以降のものは、香りが薄まってしまう。新芽が出たらすぐに採った方が良いが、早すぎると葉が小さすぎて商品には向かないので、ワークショップではある程度大きくなったものを採取している。採った葉は天日干しはせず、暗い所で乾かした方が良い。
Q ハーブティは化粧水代わりになる?
A なる。若葉を煮出したお湯をお風呂に入れるのも良い。
Q 蒸留水を化粧水として使うときは水で薄める?
A そのまま使う。水で薄めると劣化するので、蒸留水は冷蔵庫で保管し、なるべく早く使うのが良い。
・その他の質問(回答は吉田先生)
Q シラカバと見間違えやすい木は?
A ダケカンバやウダイカンバが間違えやすいが、見分け方は、実物がないと説明しづらい。