WORK SHOP
 
一般社団法人白樺プロジェクト
事務局( 田中)070-8061 北海道旭川市高砂台 6 丁目 12-1 
Mail:info@shirakaba-project.jp URL:shirakaba-project.jp 
  ( 敬称略)

 
北海道でも最も寒いこの時期に、豪雪地帯でもある幌加内町北部に位置する北海道大学雨龍研究林のシラカバ林で、冬山造材見学ツアーを行いました。伐採が進む7haのシラカバ林は、来春以降シラカバ天然更新の試験地となり再造林される予定です。伐採、再造林、森林育成の一連のプロセスの始まりであり、今後半世紀にわたって行われる息の長い研究の一端を垣間見て頂きました。
それ以外にも、かんじきを履いて北海道の森林の手つかずの姿が見られる原生林の散策と、シラカバ二次林で小径木の除伐体験を行いました。
1日目の夜には参加者による発表会と懇親会を行い、様々な背景を持つ参加者同士が交流を深めました。
 
<概要>
主催:一般社団法人白樺プロジェクト(旭川市)、北海道大学雨龍研究林(雨竜郡幌加内町)
協力:北大森林研究会(札幌市)、
日時:2025年1月17日(金曜日)、18日(土曜日)
場所:北海道大学雨龍研究林(雨竜郡幌加内町)
宿泊場所、発表会:北海道大学森林圏ステーション名寄教育研究棟(名寄市)
参加人数:31名(1日目30人、2日目29人)

冬山造材、仕分けられた丸太の山

伐採され、長いまま運ばれる

用途別に長さを決めて玉切り

どこで切るか難しい。

<内容及び日程>
1月17日(金)雪のち曇
12:50 北海道大学雨龍研究林研究棟(幌加内町母子里)に集合。
一部参加者が雪の影響などで到着が遅れ、20分遅く開始。ガイダンスを行って、見学用のバスに乗車。
13:20 研究棟を出発、5分ほどで研究棟に近い国道沿いの冬山造材現場に到着。
雪の深さは1m以上。昨年夏にも見学したシラカバ林は、ササもなく、空が大きく開いて、様子が一変していました。
伐採の理由や経緯、伐採方法の説明を受けた後、伐採のための雪の根掘り、チェーンソーでの伐倒、伐採された木が重機で引きずられて集められた場所での玉切り、長さが切りそろえられた丸太の山などの見学を通して、丸太の仕分けの考えや流通についても説明を受けました。風はないものの時折雪が降る中での見学となりました。

積雪は2m。カンジキで林道を歩く

胸径1mを超えるアカエゾマツ

雪の重みに木が耐えているよう

原生林を抜けて、岐路の白樺林

14:40 バスですぐ近くの原生林に移動し、レクチャーを受けながら「かんじき」を装着。
昨年夏のツアーでも訪れた原生林を膝くらいまでの雪をかき分けながら歩きました。胸高直径1m以上もあるアカエゾマツの大木の間や、雪の降り積もった針葉樹と大きく枝を広げた広葉樹の混ざる森を縫うように歩きながら散策。途中の斜面では滑り台を楽しんだ参加者も。冬の静寂の森を満喫しました。
16:20 林道に乗り入れたバスが雪にはまって抜け出せなくなったこともあり、研究棟には
20分遅れで到着。いったん解散し、なよろ温泉サンピラーなどで入浴後、宿泊先である北海道大学名寄教育研究棟に集合。

除伐の必要性についての資料

細い木は雪害を受けやすい

側幹ポールを使って林分密度を測る

様々な立場の人たちが参加

18:45 恒例の夜の発表会。発表は以下の通りです。
白樺プロジェクト・topica「北海道大学総合博物館休憩室の改装計画について」
林産試験場・秋津研究員「サイエンスカフェの実施計画、楽器と木材について」
森林総研東北支所・野口研究員「平庭高原のシラカバ林の再生について」
木工家・シオタニミカ(神奈川)「生木からのクラフトづくり、里山保全活動など」
村山木材株式会社(枝幸)村山専務「村山木材の森づくりについて」
特別講演・赤堀楠生(長野・林業ライター)「答えは山にある」
21:10 懇親会

アカエゾマツの大木を見上げる

伐倒のドローン撮影の打ち合わせ

枯れ木に雪の帽子。キノコのよう

除伐体験。手鋸だけで切り倒す

1月18日()晴れのち曇り
昨日できなかった参加者自己紹介と雨龍研究林の概要説明を行い、白樺プロジェクトの動画(編集中)を視聴してもらいました。
9:40 バスに乗り込み「陰の沢」に出発。50年前にトドマツ植栽を行ったものの
成績不良で、シラカバの細い木が侵入し林立している二次林で、手鋸を使った除伐体験を行う。密度管理の基本のレクチャーを受け、その後は3班に分かれる。測幹ポールと呼ばれる4mの竿を使って半径として円を描き、その範囲(5㎡)に入る立木数を数えることで立木密度がわかります。その上で、樹高に対して葉の付いた枝がある割合(樹冠長率)や他の木との関係など様々な要素を考慮して基準本数分残す木を決め、残りを手鋸で伐採する。シラカバばかりではなく、ナラやキハダなども伐採する。樹種によって幹の断面にも個性があり、輪切り状に手ノコで切って持ち帰るなど、時間がいくらあっても足りないくらいでした。
 
12:00 研究棟に戻り、昼食。いったん解散。
13:30 昼食後にオプションとして、昨日の伐採現場から丸太として集材されない、上部の
細い幹や枝などから利用できるものを手鋸などで切って採集。参加者それぞれが研究用やクラフト用やクラウドファンディング返礼品用などに持ち帰りました。また、重機(グラップル)の試乗体験を行い、学生の参加者はかなり盛り上がっていたようです。クマゲラも見ることもできました。
16:00 解散

かんじきの履き方のレクチャー

除伐前に密度管理の基本説明

シラカバとキハダ。それぞれ個性

参加者の学生が重機操縦体験

<ツアーを終えて>
白樺プロジェクトとしては、初めて冬のツアーを開催しました。
プログラム自体も夏よりも天候に左右され、アクセスも参加者には雪道の遠距離運転をお願いすることになり、不安な要素もありました。高速道路の閉鎖の影響やJRの運休などにより一部参加者が集合時間に間に合わないことがありましたが、天候にも恵まれ事故や怪我無く、無事ツアーを完遂することができました。
参加人数は冬のツアーということもあり20名程度に絞る予定でしたが、最終的に30名ほどとなりました。大人数で多様な背景の参加者と交流することができました。
心配された天候も、降雪はありながらも風は穏やかで、2日目はマイナス27度まで下がりましたが、参加者の防寒対策などもあり、問題なくプログラムを進行できました。
今回冬にツアーを開催した一番の目的は、昨年夏にも見学してもらった研究棟近くの国道沿いのシラカバ林が冬でも見学しやすい場所にあり、今回の伐採が今後半世紀にわたる研究の始まりとなり、それを多くの人に共有してもらいたいという思いからでした。今回のツアーの様子は動画に残し、次回夏の掻き起こしによる再造林以降の参加者の理解にも役立つようにする予定です。そうした取り組みにより、シラカバ天然更新による森づくりが、研究林以外でも広まることにつながればと思います。
白樺プロジェクトでは、実際に森まで足を運んで自分の目で見てもらい、森について一緒に考えていく「学びの楽しさ」のようなものを参加者と主催者(特に研究者・林業技術者)が対等の立場で共有できればと考えています。
今回は雨龍研究林のスタッフの方々が、盛りだくさんのプログラムを準備して頂き、楽しい学びの場となりました。また、夜の発表会や懇親会など、世代を超えた参加者同士の交流による学びの機会にも恵まれました。
遠方から参加の林業ライターの赤堀楠生さんには特別講演を行って頂き、この場を借りて感謝申し上げます。

文責/鳥羽山聡